ご近所と法律
隣の木の根が塀や配管を押してくるとき。民法で枝と扱いが違う根の越境(世田谷区)
2026-10-15
「隣の木の根っこで、うちのブロック塀が傾いてきたんです。
根は勝手に切っていいんでしょうか」。
こういうご相談をいただくことがあります。
塀の足元が持ち上がっている。
排水の流れが悪くなって、業者に見てもらったら根が入っていると言われた。
隣の木のことなので、どこまで手を出していいのか分からない。
そういう方に向けて書きます。
民法は、根と枝を分けて書いている
隣の木が境界線を越えてきたときの決まりは、民法の第233条にあります。
題名は「竹木の枝の切除及び根の切取り」です。
同じ条文のなかで、枝と根は別の項に分けて書かれています。
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条文の書き方 |
誰が切るか |
| 枝(第1項・第3項) |
土地の所有者は、竹木の所有者に、その枝を切除させることができる |
原則は木の持ち主。 催告しても相当の期間内に切らないとき、持ち主が分からないとき、急迫の事情があるときは、土地の所有者が切り取れる |
| 根(第4項) |
隣地の竹木の根が境界線を越えるときは、その根を切り取ることができる |
条文の上では、越えてきた側の土地で切り取れる |
枝は、まず木の持ち主に切ってもらうのが原則です。
自分で切れるのは、第3項に挙げられた三つの場合に限られます。
根のほうには、こうした条件が書かれていません。
境界線を越えてきた根は切り取ることができる、とだけあります。
ここが枝との大きな違いです。
ただし、条文が扱っているのは「境界線を越えた根」です。
境界の向こう側、つまり隣の敷地のなかにある根や幹まで、こちらで手を入れてよいとは書かれていません。
枝のほうの決まりは、2023年4月の民法改正で変わりました。
その中身は隣の家からはみ出した枝は切っていいのか。2023年4月の民法改正で変わったことにまとめています。
この記事では根の話に絞ります。
切ってよいことと、切ったほうがよいかは別の話
条文の上で根を切り取れるとしても、黙って切ってよいかは別に考えたほうが安心です。
理由は二つあります。
一つは、木そのものへの影響です。
根は木を支え、水を吸い上げています。
境界際で太い根を何本も切ると、木の片側の支えが弱くなります。
どこまで切ると危ないかは、木の種類、高さ、根の張り方、土の状態で変わります。
一律の目安はありません。
もう一つは、切ったあとの話です。
切った根の側に木が傾いた、枯れてきた。
そうなったとき、木の持ち主との話し合いが難しくなります。
先に一言伝えておけば、木の持ち主のほうで「それなら幹ごと切る」「植木屋に見てもらう」と考えることもできます。
境界のすぐ上に幹が立っている木は、そもそもどちらの木かという話になります。
そうした木については境界線の上に立っている木は、どちらのものか。民法の付合と共有の考え方(世田谷区)をご覧ください。
根を切る前に、隣家と話しておくこと
隣家に話をするときは、次のことを伝えておくと、話が進みやすくなります。
- どの木の根が、どこまで来ているか(写真があると伝わりやすい)
- 何が起きているか(塀が傾いた、舗装が割れた、排水が詰まった、など)
- こちらの敷地で、境界際の根を切りたいと考えていること
- 切る範囲と、作業を頼む予定の業者がいるかどうか
- 木が傾いたり枯れたりしないか、心配していること
塀や配管の傷みがすでに出ている場合は、根を切る前の状態を写真に残しておきます。
あとで「いつから、どのくらい傷んでいたか」を話すときの材料になります。
配管の詰まりは、根が原因かどうかを先に確かめることになります。
配管の中に根が入っているのか、別の原因なのかは、外から見ただけでは分かりません。
配管の点検をする業者に見てもらい、根が入っていると分かってから、隣家に話すほうが話がこじれにくくなります。
塀や配管が壊れたとき、法律はどう書いているか
木が原因で損害が出たときの決まりとして、民法第717条があります。
第1項は、土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があって他人に損害を生じたときの責任を定めています。
まず占有者(木を管理している人)が負い、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしていたときは、所有者が負います。
借家の庭の木のように、木を管理している人と持ち主が別のこともあります。
第2項は、この規定を「竹木の栽植又は支持に瑕疵がある場合について準用する」としています。
条文がこう書いているからといって、隣の木の根で塀が傾けば、そのまま木の持ち主が賠償することになるとは限りません。
木の植え方や手入れに瑕疵があったと言えるかは、個別の事情で判断されます。
根が原因かどうかも、まず確かめる必要があります。
費用の分担や修理の話になりそうなときは、話し合いの前に、区の無料相談で弁護士に聞いておく方法があります。
| 窓口 |
区のページの記載 |
| 区民相談 |
相続や不動産、金銭貸借等、日常生活の困りごとの相談。 電話または面談。 月曜日から金曜日の午前8時30分から午後5時 |
| 弁護士相談 |
予約制で1人25分。 相談日の1週間前の同じ曜日の午前9時から、その曜日を担当する区民相談室に電話で予約 |
弁護士相談の会場と予約先は曜日で分かれています。
月曜日が烏山総合支所(03-3326-6304)、火曜日が砧総合支所(03-3482-3139)、水曜日が世田谷総合支所(03-5432-2016)、木曜日が北沢総合支所(03-5478-8001)、金曜日が玉川総合支所(03-3702-4864)です。
どちらも区内在住・在勤・在学の方が対象です。
弁護士相談は、相手方との交渉や仲介はしないこと、書類作成そのものや記載内容の点検はしないこと、調停や裁判で係争中の案件は相談できないことが、区のページに書かれています。
同じ案件の再相談・継続相談も受け付けていません。
相談できるのは1件につき1回なので、聞きたいことと、写真や経緯などの資料をまとめてから予約してください。
庭番にご相談いただけること
庭番は世田谷区とその周辺で、伐採、抜根、剪定、草刈り、庭の片付け、植栽・植え替えを請けています。
八年、二千件ほど木や草を見てきました。
境界を越えてきた根をどこまでなら切れそうか、切ったあとに木が傾くおそれはないか。
現地で木と根の張り方を見て、お伝えします。
隣家と話がまとまって、木ごと切る、切り株を抜くとなったときのご相談も承ります。
料金の目安はサイトの料金表をご覧ください。
ご相談は電話とLINEで。
参考にした資料
この記事は2026年10月時点の民法の条文と、世田谷区の公表資料によります。
区の相談の日時や予約方法、電話番号は変わることがあります。
根を切ってよいか、損害を誰が負担するかは、個別の事情で変わります。
実際に動く前に、上の各ページで最新の内容を確かめ、必要に応じて区の相談窓口をご利用ください。