ご近所と法律
落ち葉の苦情は、どこまで応じることになるのか。判例の考え方と世田谷区での相談先
2026-09-14
「お宅の木の葉っぱが、うちの雨どいに詰まるんです」。秋になると、こういう一言から話が始まります。言われた側は、木を植えたのはずっと前で、葉が落ちるのは当たり前だと思っています。言った側は、毎年自分が掃除していることに疲れています。どちらの気持ちも、分からなくはありません。
落ち葉の被害が、最高裁で違法でないとされた例がある
落ち葉をめぐって裁判になった例があります。国立国会図書館のレファレンス協同データベースに、大阪府立中央図書館の回答として紹介されている事件です。
国が管理する一級河川の堤防の上にケヤキが生えていました。図書館に寄せられた質問では、その落ち葉が20メートル離れた建物の雨どいに詰まってしみを作り、落ち葉の清掃もさせられた、とされています。被害を受けた側は、損害賠償や木の伐採を求めました。
昭和61年7月14日、最高裁判所第二小法廷は上告を退けました。この落ち葉による被害は受忍限度内であり違法ではない、とした原審(高等裁判所)の判断が、そのまま認められた形です。受忍限度とは、社会で暮らすうえでお互いに我慢すべき範囲のことです。その範囲内であれば、伐採や落ち葉を防ぐ措置を求めることもできない、という判断です。
ただし、これは一つの事件についての判断です。木の場所、落ち葉の量、被害の中身が違えば、結論も変わりえます。「落ち葉は何があっても我慢するもの」という決まりではありません。とはいえ、落ち葉だけで法的な責任を問うのは簡単ではない、とは言えます。
世田谷区は、お隣同士の話には入れない
世田谷区は、隣の敷地の樹木についての相談ページで、「お隣同士の問題については、区が行政の権限で対応することはできません」としています。そのうえで、まずお隣に直接困っていることを伝えて、剪定をお願いするよう案内しています。
同じページには、場合によっては法律的にどのような対処ができるのかを調べ、自分で解決方法を選ぶことも必要だと書かれています。あわせて、区で弁護士相談を行っていることが案内されています。お隣が高齢で剪定ができない場合などは、一緒に手伝って剪定するのも方法の一つとされています。
区の弁護士相談は、土地や家屋を含む法律問題全般を扱っています。相談できるのは、区内に住んでいるか、通勤・通学している方です。相談時間は1人25分です。予約は相談日の1週間前の同じ曜日、午前9時から、その曜日を担当する区民相談室に電話で入れます。25分は長くありません。いつから、どこに、どれくらい落ち葉が来ているか。メモと写真を用意しておくと、話が早く進みます。
気をつけたいのは、同じ案件での再相談・継続相談は受け付けていないことです。調停や裁判で係争中の案件も相談できません。相談は一度きりと考えて、使うなら次に書く民事調停を申し立てる前にしておきます。
話し合いで決着がつかない場合は、裁判所の民事調停という手続もあります。裁判所は、民事調停を近隣トラブルの有効な解決手段の一つとして紹介しています。勝ち負けを決めるのではなく、話し合いで合意をめざす手続です。申立先は、原則として相手方の住所地を受け持つ簡易裁判所です。裁判所の説明では、通常2、3回の期日で3か月以内に解決するものが多いとされています。
落ち葉そのものは、どう片付けるか
世田谷区の分別の案内では、落ち葉は可燃ごみです。4袋以上になるときは、清掃事務所に相談するよう書かれています。枝も可燃ごみで出せますが、太さ10センチ・長さ50センチまでという条件があります。
落ち葉の季節は、数日で終わるものではありません。量が多くなりそうなときは、先に清掃事務所に相談しておきます。
隣から葉が来ている場合、敷地に落ちた分は自分で掃く、というのが現実的な対応です。そのうえで、どうしても手が回らない量なら、お隣に伝える材料になります。「毎週これくらい出ています」と袋の数で伝えると、感情ではなく量の話になります。
話がこじれやすい場面
落ち葉の話がこじれるのは、たいてい落ち葉だけの話ではなくなったときです。
| 場面 |
こじれやすい理由 |
| 雨どいや側溝が詰まった |
掃除の手間から、修理や水漏れの話に広がる |
| 枝が境界を越えている |
落ち葉の話が、越境した枝の話に変わる |
| 毎年同じことを言っている |
「去年も言ったのに」が積み重なる |
| 相手が高齢、または空き家 |
頼んでも手入れが進まない |
| 最初の一言がきつかった |
中身より言い方のほうが残る |
特に多いのが、枝の越境と重なる場面です。枝が境界を越えているなら、落ち葉とは別に法律の決まりがあります。2023年4月の民法改正で、越境した枝の扱いは変わりました。詳しくは隣の家からはみ出した枝は切っていいのか。2023年4月の民法改正で変わったことに書きました。
言われた側にできるのは、まず相手の困りごとを具体的に聞くことです。雨どいなのか、玄関先なのか、駐車場なのか。場所が分かれば、どの枝を詰めればいいかも見えてきます。判例がどうであれ、毎日顔を合わせる相手です。法律上どうなるかと、どうすれば暮らしやすいかは、分けて考えたほうが楽になります。
剪定で、どこまで減らせるか
剪定で葉の量を減らせば、落ちる葉の量も減ります。ただ、木を残す以上、落ち葉がなくなることはありません。落葉樹は秋に葉を落としますし、常緑樹も時期をずらして葉を入れ替えます。
減らし方は、おおまかに三つあります。
- 隣側に張り出した枝を詰めて、葉が落ちる範囲を自分の敷地に寄せる
- 高さを下げて、風で遠くまで飛ぶ葉を減らす
- 枝数を減らして、木全体の葉の量を減らす
どれも、一度切れば終わりではありません。枝は伸びるので、数年ごとに手を入れる前提になります。強く切りすぎると、かえって勢いよく枝が出てくる木もあります。
時期も大事です。世田谷区は、秋の落葉後が一般的に落葉樹の剪定時期だとしています。落葉樹は葉が落ちきってから切ると、枝ぶりが見えて作業しやすくなります。常緑樹は時期が違います。そのあたりは世田谷区で庭木を切る時期。落葉樹は冬、常緑樹は春が基本で、急ぐときは別にまとめました。剪定では追いつかず、木そのものを減らすことを考えるなら、切る前に届出などの手続きが要るかどうかを、区のみどり政策課に確認してください。
庭番にご相談いただけること
庭番は世田谷区とその周辺で、伐採、抜根、剪定、草刈り、庭の片付け、植栽・植え替えを請けています。八年、二千件ほど木や草を見てきました。お隣から落ち葉のことを言われて、どの枝をどこまで詰めればいいか分からない。残すか切るかで迷っている。そうしたご相談も承ります。お隣の雨どいや側溝の上にかかっている枝など、気になっている場所を教えていただければ、現地で見て一緒に考えます。料金の目安はサイトの料金表をご覧ください。ご相談は電話とLINEで。
参考にした資料
この記事は2026年9月時点の、裁判所・国立国会図書館・世田谷区の公表資料によります。判例は個別の事件についての判断です。ご自身の状況にそのまま当てはまるとは限りません。相談窓口の受付方法や、ごみの出し方は変わることがあります。実際に動く前に、上の各ページで最新の内容をご確認ください。