区への届出・許可
国分寺崖線の斜面で庭木を切る前に。世田谷区の崖線地区と、都が指定する区域
2026-09-03
「うちは崖の上なんですが、この木、切っていいものでしょうか」——斜面沿いのお宅でよく出てくる一言です。平地の庭とは、かかってくる制度も、当日の段取りも変わります。
崖線の一帯は、区が「保全する場所」として区切っている
世田谷区の「国分寺崖線保全の取り組み」によると、国分寺崖線は立川市、国分寺市、小金井市等から連なる崖です。区はここに四つの条例を挙げます。国分寺崖線保全整備条例、斜面地における建築物の制限に関する条例、風景づくり条例、みどりの基本条例。風景づくり条例では崖線周辺が「水と緑の風景軸」の重点地域、みどりの基本条例では「国分寺崖線保全重点地区」にあたり、東京都風致地区条例の多摩川風致地区も重なります。崖線沿いの敷地は、一つの制度だけを見ても足りない場所だ、ということです。
崖線地区の制限は、建物の側にかかっている
国分寺崖線保全整備条例の適用対象は、区が指定した崖線地区(約300ヘクタール)で、傾斜度10パーセント以上の斜面地(約183ヘクタール)を概ね含みます。斜面そのものより広く区切られている、ということです。定められている制限は建築物についてのもので、樹木の伐採そのものについての制限は書かれていません。崖線地区だから木が切れない、という話ではない、ということです。
伐採届と風致地区の許可は、重ならないように整理されている
世田谷区の「みどりの基本条例に基づく樹木の伐採届について」では、地上1.5メートルの高さにおける幹周り80センチメートル以上の樹木と、高さ10メートル以上の樹木が、伐採前の届出の対象です。
区は、届け出の対象とならないものも挙げています。他のみどりの保全のために行う除伐等の伐採、農業・林業・造園業等において事業として行う伐採、枯損した樹木又は危険な樹木の伐採、非常災害の応急措置として行う伐採。斜面沿いのご相談は枯れた木や倒れそうな木の話が多く、その場合は幹周りが80センチを超えていても届出そのものが要りません。
そのうえで、他の法令に基づく許可を受けた伐採も対象外です。東京都風致地区条例などに基づく許可がこれにあたります。崖線沿いは多摩川風致地区とかなり重なるので、風致地区の許可から入った場合、みどりの基本条例の伐採届は重ねて出さなくてよい、ということです。
一方、世田谷区風景づくり条例に基づく「木竹」の伐採の届け出は別に必要です。こちらは総合支所ではなく、都市整備政策部 都市デザイン課(03-6432-7153)に事前に相談することとされています。窓口が別なので、伐採届を出した流れで済むものではありません。
みどりの基本条例の伐採届の届出先は、計画地を管轄する総合支所街づくり課です。風致地区側の手続きは成城・岡本・瀬田で庭木を切るときは、区の許可が要ります(多摩川風致地区)に、幹周りの測り方と届出書の中身は世田谷区で庭木を切る前に。幹周り80センチ以上なら伐採届が要りますに書いています。
斜面そのものに区域がかかっていることがある
世田谷区の「土砂災害防止法に基づく指定区域について」によると、土砂災害警戒区域は傾斜度30度以上・高さ5メートル以上の急傾斜地とその周辺の範囲で、区内では成城、大蔵、岡本、等々力、喜多見、瀬田などが挙がっています。指定は令和7年4月25日現在で104箇所、そのうち土砂災害特別警戒区域が81箇所です。
いずれも建物と開発の側の話です。区は土砂災害防止法を、危険の周知や警戒避難体制の整備等のソフト対策と説明しており、この法律に立木竹の伐採についての規制はありません。木を切る側に許可がかかるのは、次の区域です。
東京都が指定する急傾斜地崩壊危険区域です。傾斜度30度以上、高さ5メートル以上で人家5戸以上への危害が予想される場合などが対象で、区域内で許可が必要な行為に、はっきり「立木竹の伐採」が入っています(急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律第7条第1項第4号)。一方、施行令第2条第6号で「除伐又は倒木竹若しくは枯損木竹の伐採」は許可不要です。生きている木を抜き伐りするのか、枯れ木や倒木を片づけるのかで扱いが分かれます。ご自宅が区域に入るかの確認は所管の建設事務所になり、土砂災害警戒区域とは別の制度なので、両方を別々に見る必要があります。
斜面の現場で、先に見ているもの
国土交通省の「我が家の擁壁チェックシート(案)」で、周辺環境条件の項目は水抜き穴、水のしみ出し、排水施設の三つです。樹木や根の項目はありませんが、三項目がすべて水まわりであることは、斜面の庭を見るときの手がかりになります。木を切ったあと地表が乾く。落ち葉が排水溝に溜まる。切り株の根が擁壁の裏に残る。どれも水の通り道の話です。
斜面では機械が入りません。切った材を斜面の下へ滑らせて落とす搬出も、急傾斜地崩壊危険区域では許可が必要な行為です(法第7条第1項第5号「木竹の滑下又は地引による搬出」)。ただし急傾斜地の下端に隣接する平らな土地で行うものは許可不要とされています(施行令第2条第7号ニ)。区域の内外にかかわらず、担ぎ上げるのか、小分けにして運ぶのか、上と下のどちらから出すのかが、当日の見積りに直結します。
庭番にご相談いただけること
庭番は世田谷区とその周辺で、伐採・抜根・剪定・草刈り・庭の片付け・植栽を請けています。八年、二千件ほど木を見てきました。崖線沿いのお宅では、切る前にどの届出や許可が要りそうかを確認したうえで、伐採か、剪定で高さを詰めるか、様子を見るかをご相談いただけます。
木の全体、斜面の上下がわかる引きの写真、擁壁と木の距離、敷地までの通り道。この四つが写った写真があると、電話やLINEでも話が進みます。
参考にした資料
この記事は2026年9月時点の資料をもとにしています。条例の内容、区域の指定、窓口は変わることがあります。ご自宅がどの区域に入るかは、区の窓口と所管の建設事務所でご確認ください。