手入れと処分
台風の前に庭木のどこを見るか。国と東京都が街路樹・公園樹で使っている点検項目から
2026-08-24
「この木、台風で倒れませんか」——夏の終わりに、いちばん多く聞くご相談です。屋根より高くなった木が風の日に揺れているのを窓から見ていると、落ち着かないものだと思います。
倒れるかどうかを外から言い当てるのは、専門家でも難しいところがあります。ただ、公園や道路の樹木については、国と東京都が「どこを見るか」を文書にして公開しています。国土交通省の「都市公園の樹木の点検・診断に関する指針(案)」と、東京都建設局の「令和3年度 街路樹診断等マニュアル」です。この2つに書いてある項目を、庭に置きかえて見ていきます。
根元は、外からでもかなり分かる
東京都は防災上重要な路線の大径木を対象に、外観診断と根株診断を必須にした防災診断を実施してきました。その効果検証について、マニュアルに「外観診断において根株の異常を6割以上検出していることが明らかとなった」とあります。掘ったり機器を当てたりしなくても、6割以上は拾えていたということです。
東京都のマニュアルは、根元の揺らぎを「診断者が幹に両手をつき、体重をかけて数回幹を強く押すことにより確認する」と書いています。国の指針も、根株や植え桝と土壌に隙間があれば根返りの危険性が高いと判断できるとしています。
ご自宅の木で試すときは、無理をしないでください。押して幹がしなるのは普通のことで、問題になるのは根元から動くほうです。木の周りの土に割れ目がないか、地面と根株のあいだに隙間ができていないかも、しゃがんで見てみてください。
幹の傾きは、傾いていること自体より地際とセットで見ます。東京都は、途中で幹が立ち直って根付いたと思われるものは、地際に異常がなければ健全に近いとしています。
外から見えるサインを、一覧にすると
国土交通省の指針の参考資料には、点検項目ごとの評価基準がAからDの4段階で載っています。Dは「非常に高い危険性があり、すぐに倒伏、枝折れするおそれがある」段階です。
ただし、どの項目を誰が見るかは分かれています。根元の揺らぎ・幹の傾き・キノコは徒歩による目視等で発見できる定期点検の項目、幹の開口空洞や腐朽部の露出は専門技術者による診断の項目です。後者はご自宅で判断する話ではありませんが、業者に見てもらうときの物差しになります。
| 見るところ |
指針での段階 |
「非常に高い危険性」とされる状態 |
| 根元の揺らぎ |
定期点検 |
根元部分から揺らぐ。根株や植え桝と土壌に隙間がある |
| 幹の傾き |
定期点検 |
傾いていて、地際周辺に亀裂や異常な盛り上がりがある |
| キノコ |
定期点検 |
腐朽力の強いキノコ、または剪定では対処できないほどの腐朽 |
| 幹の開口空洞 |
診断(専門技術者) |
芯に達し、幹の周囲長の3分の1以上 |
| 腐朽部の露出 |
診断(専門技術者) |
幹の周囲長の3分の1以上 |
枯れ枝とぶら下がり枝は評価表のない日常点検の項目ですが、書き方はいちばんはっきりしています。「わずかな風でも落下するおそれがあるため、日常点検での発見に努め、速やかに除去する」。台風の前にひとつだけ見るとしたら、ここだと思います。
キノコが出ていたら、それは表面の話ではない
根元や幹にキノコが出ていると、掃除の対象のように見えてしまいます。ですが東京都のマニュアルは、「キノコを作る腐朽菌は、樹木の根腐れ部や傷口から入り込み木部を食べる(腐食する)ことで強度を落とし、倒木や落枝を起こしている」と説明しています。出ているのは、中で進んでいることの結果です。
国の指針は、ベッコウタケ、コフキサルノコシカケのような腐朽力の強いキノコを名指しし、見分けられるようにしておくことが重要だとしています。ただ、見分けがつかなくても判断は止まりません。指針は「キノコの発生を認めたときは全てC判定以上」とし、剪定等では対処できないほどの腐朽が見られる場合はD評価としています。名前が違うから様子見、とは読まないということです。
出ている場所でも意味が変わります。東京都のマニュアルは、枯枝を分解する菌(落枝の原因)と根株心材腐朽を起こす菌(倒木の原因)を分け、後者の多くは幹下部や根元部に見られるとしています。根元のキノコのほうが、倒れる話に近い。種類が分からなければ、いつ、どこに、どのくらいの大きさのものが出たか、写真を撮っておいてください。
枝を抜いて風を逃がす。ただし、いきなり詰めるのは逆効果
東京都のマニュアルが挙げている処置のひとつが「風圧軽減剪定」です。「切返し剪定による樹冠の縮小又は枝抜き剪定により込み合った枝の間引きを行う」もので、風を受ける面積を減らし、根が支えられる大きさまで頭を下げる、という考え方です。
大事なのはその次の一文です。「樹冠を縮小するに当たっては、いきなり強剪定で樹冠を詰めるのではなく、目標樹形を定め、数年かけて計画的に樹高や枝張りを縮小していくことが求められる」。マニュアルの改定の経緯にも、強剪定などの不適切な処置により却って樹勢を弱めることが少なくなかった、と書かれています。台風が近いからと一気に丸坊主にするのは、東京都が避けるように書いている側の処置です。
いつ切るかで木への負担が変わる点は、世田谷区で庭木を切る時期。落葉樹は冬、常緑樹は春が基本で、急ぐときは別にまとめてあります。
台風が近づいた週にできること
世田谷区は風水害への事前の備えとして「家の周りの点検・清掃をしましょう」と案内しています(ページ更新日は2026年5月29日)。庭木でいえば、この時期に手をつけて意味があるのは、次のあたりだと思います。
- 折れてぶら下がっている枝を落とす
- 枯れた枝を落とす。特に太いもの。東京都のマニュアルは元口の直径5センチメートル以上を大枝と定義し、大枝・中枝の枯れや折れは丁寧に確認するよう求めています
- 鉢や支柱、資材など、飛ぶものを片付ける
- 隣家や道路にはみ出している枝を確認する
反対に、この週にやらないほうがいいのが一気の強剪定です。風を逃がす枝抜きと、樹高を大きく下げる作業は別のものと考えてください。
風が吹き始めてからは、木に近づかないでください。世田谷区は激しい突風への備えとして、屋外では「電柱や太い樹木には近づかない」と案内しています(ページ更新日は2023年3月2日)。
隣家や道路に枝が出ている場合は、誰が切るのかという別の話が絡みます。道路管理者から連絡が来る流れは道路にはみ出した枝は誰が切るのか。世田谷区の道路管理者から連絡が来る流れに書いています。
庭番にご相談いただけること
庭番は世田谷区とその周辺で、伐採・抜根・剪定・草刈り・庭の片付け・植栽や植え替えを請けています。八年、二千件ほど木を見てきました。台風前に気になる木があれば、根元の様子、枯れ枝やぶら下がり枝の有無、どこを抜けば風を逃がせるかを見て、この秋にやることと数年かけてやることを分けてお話しします。木の全体と根元が写った写真があると、電話やLINEでも話が早くなります。
参考にした資料
この記事は2026年8月時点で公開されている資料をもとにしています。ここに挙げた基準は公園樹・街路樹の管理者向けのもので、個人のお宅の庭木に適用される決まりではありません。最新の内容は各機関の公式ページでご確認ください。