手入れと処分
切り株は抜いたほうがいいのか。残す・枯らす・抜くの分かれ目(世田谷区)
2026-08-29
「切り株、このままでも大丈夫でしょうか」——木を切り終えた庭でよく出てくる一言です。抜けばすっきりしますが、掘る作業は切る作業とは別物です。残したときに何が起きるのかを、公式に案内されている範囲で整理しました。
残したとき、切り株の側で何が起きるか
世田谷区は「シロアリについて」のページで、区内で主な被害をもたらすのはヤマトシロアリだとしています。「常に湿った木材や土中で生活し」「腐った木材や繊維類などを食し、乾いた木材は食べません」。予防として挙げられているのは、庭先の放置木材を早期に処分すること、雨漏りや漏水の点検と補修です(ページ更新日2019年7月1日)。
区のページに「切り株」という語は出てきません。ただ、切ったあとに残るのは、湿った木材が地面に接したまま置かれた状態ではあります。東京都保健医療局の読み物でも、予防に「家の周囲に木材などを放置しないようにし、床下などは通気をよくする」が挙がっています。
同じ区のページで、保健所の役割は虫の見分けです。「わからない場合は保健所までお持ちいただければシロアリかどうか確認します」とあり、実際に出た虫を持ち込む先として案内されています。駆除の相談先として並んでいるのは、一般社団法人 関東しろあり対策協会(03-3341-7825)、公益社団法人 東京都ペストコントロール協会(03-3254-0014)、世田谷害虫防除協同組合(03-6805-3666)です。株の腐り具合や家までの距離をどう見るかは、この駆除側の窓口か、木を見る業者の話になります。
もうひとつ、切り株からは芽が出ます。国の河川工事では、それを前提に「萌芽抑制工」という工種が立っています。庭でも、放っておくと株の周りから細い枝が何本も立ち上がる木があります。
根は、切ったあとも管のそばに残る
越前市(福井県)は下水道のページで、生活排水には植物の栄養が多く含まれるため、近くの植物が根を管内にまで伸ばし、成長した根が管を詰まらせる、と案内しています。同じページでは「公共ますから宅内側はお客様管理となり」、宅内側で問題が起きた場合は所有者の負担で対応することになる、としています(ページ更新日2023年11月15日)。これは越前市が示している区分で、世田谷区の管理区分は区の案内で確かめてください。
区分がどうであれ、幹を切っても地中の根は残ります。木が排水管や公共ますに近いなら、抜くかどうかとは別に根の回り方を見ておく意味はあります。
抜くのに手間がかかるのは、こういう場所
抜根の手間は木の太さだけでは決まりません。効いてくるのは、機械が入るかどうかです。
国土交通省北陸地方整備局 阿賀野川河川事務所の「萌芽抑制工の手引き書(案)追補版」(令和6年2月)は、軟弱な地盤、傾斜地、進入路の有無、水際、の四つを施工条件として整理しています。ただしこれは掘るか掘らないかの分かれ目ではありません。切り株を枯らす四つの工法のうちどれを使うかの分かれ目で、原文は「①軟弱な地盤もしくは②傾斜地のいずれかに該当し、重機での施工性及び進入路を確保できない場合は『塩挿入』または『木酢液挿入、塗布』を選定する」。掘る工法は選定フローに出てきません。
それでも、重機が入るかどうかで作業の中身が変わるという整理の仕方は、庭で見る場所と重なります。門から庭までの幅、段差、隣家との距離。機械が入らなければ、掘るのも運び出すのも人の手になります。地下に何が通っているかも先の問題で、国土交通省中部地方整備局の「地下埋設物の事故防止マニュアル」(令和2年10月)は、台帳と設計図面で位置を確認したうえで試掘等を行うとしています。道路や河川の工事の手順ですが、位置が分からないまま掘らないのは庭でも同じです。
木の太さで金額のどこが動くかは、伐採の見積書はどこを見るか。切る費用と処分費が別になる理由(世田谷区)に書いています。
抜かずに済ませる方法もある
前述の手引き書は、河道内のヤナギを対象に、切り株を枯らす四つの工法をまとめています。
| 工法 |
内容 |
手引きでの位置づけ |
| 覆土 |
覆土厚20〜30センチ |
重機と進入路を確保でき、水際でない場合。最も効果が高い |
| 塩挿入 |
8孔、深さ20センチ、1孔60グラム以上 |
軟弱地盤・傾斜地・水際など重機が使えない場合 |
| 木酢液挿入 |
8孔、深さ20センチ、1孔60cc以上 |
同上 |
| 木酢液塗布 |
切り株上面に原液を2回塗布(乾燥後に2回目) |
同上 |
覆土は日光を遮って枯らす方法で、厚さは「10cmでも効果があるとのことであるが、風雨・積雪等を考え20〜30cmとした」と注記されています。覆土固有の留意点として挙がっているのは、礫が多いと日光を遮りきれずに再萌芽する可能性があること。四工法に共通の留意点は別に立っていて、「実施は4月~9月の成長期(根茎養分が活発に流動する時期)が望ましい」ことと、伐採時に現場に落ちた枝屑からも萌芽するので放置しないこと、の二つです。枯死は、萌芽していないこと、樹皮が手で剥がせること、カビ・キノコ類による腐食などで確認します。
対象は河川のヤナギで、住宅の庭の土や周囲の植物への影響までは書かれていません。塩を使う工法をお庭で真似することはおすすめしません。見ておきたいのは、遮光して時間をかければ株は枯れていく、という筋道です。
抜いた株と根は、どこに出せるのか
世田谷区は、土や砂、石やブロック、レンガについて、「廃棄物に該当しない、または清掃工場などのごみ処理施設の故障につながる恐れがあるため区では収集できません」として、処理業者への引き取りを案内しています(ページ更新日2025年3月19日)。抜いた根株そのものの記載はありません。土の絡んだ株をどう扱うかは、出す前に区の窓口で確認しておくのが早いです。
抜いた株は根に土が絡んだまま出てきます。土を落として切り詰める手間が抜根の後ろにもう一段ある、と見ておくとずれません。枝や草の出し方の決まりは世田谷区で剪定した枝や草の出し方。太さ10センチ・長さ50センチまでと束ね方の決まりにまとめてあります。
庭番にご相談いただけること
庭番は世田谷区とその周辺で、伐採・抜根・剪定・草刈り・庭の片付け・植栽を請けています。八年、二千件ほど木を見てきました。切り株は、抜くほかに、平らに削って残す、埋め戻して様子を見る、といった形でもご相談いただけます。見積りは切る作業と抜く作業を分けて出しています。
株の全体、家・塀・排水ますまでの距離、庭までの通り道が分かる写真があると、電話やLINEでも話が進みます。
参考にした資料
この記事は2026年8月時点で公開されている資料をもとにしています。受け入れ条件や窓口は変わることがあります。手引き書は河道内のヤナギを、地下埋設物のマニュアルは道路・河川の工事を対象にしたもので、個人のお庭の基準ではありません。排水設備の管理区分は越前市(福井県)が示しているもので、世田谷区の基準ではありません。