手入れと処分
この木は枯れているのか。東京都の街路樹診断マニュアルが見ている枯死のサイン
2026-09-12
「葉が全部落ちてしまって、これもう枯れてますよね」——このご相談は、秋から冬にかけて増えます。切ったほうがいいのか、もう少し様子を見ていいのか、分からないまま冬を越す方が多い印象です。
葉の有無だけでは決まりません。国や東京都が街路樹の点検で見ているのは、葉以外の場所です。以下は、その手順書に書かれていることを、庭木に当てはめて読める形に整理したものです。
葉が落ちていることと、枯れていることは別
東京都建設局の街路樹診断等マニュアルは、樹木点検の項目のうち「葉の状態」について「冬で葉がない場合は、点検項目から外しても良い」とし、「先端枝の枯れ」については「冬で葉がない場合は、枝先の伸長や密度、冬芽の有無や大きさなどから判断する」としています。冬芽が付いているか、枝先が今年どれだけ伸びたか。葉の代わりに見るのはここです。
同じマニュアルが繰り返し書いているのは、比べる相手を用意することです。葉の密度も大きさも色も「生育環境によって大きく異なるため、周囲の同樹種と比較して判断すると良い」。同じ庭の別の木や近所の同じ種類の木と並べて見ると、その木だけが遅れているのかが分かります。
東京都が使っている五段階
都のマニュアルには、枝の伸長量や枝・幹の枯損、葉の大きさと色から樹勢を五段階で見る表があります。
| 活力度 |
樹勢 |
| 1 |
旺盛な生育状態を示し、被害が全く見られない |
| 2 |
いくぶん被害の影響を受けているが、あまり目立たない |
| 3 |
異常が明らかに認められる |
| 4 |
生育状態が劣悪で回復の見込みが低い |
| 5 |
ほぼ枯死している |
都の活力判定基準表では、樹勢・樹形がどちらも1か2なら「健全か健全に近い」、3があれば「注意すべき被害」、4があれば「著しい被害」、5があれば「不健全(撤去・植替え)」です。
葉が落ちているだけの木は、たいてい枝先が伸びていて、冬芽も付いています。気にかけておきたいのは、てっぺんから枯れてくる形です。都のマニュアルは「頂端枝の衰弱、先端枝の枯れ下がりなどがある場合は、根株腐朽の末期や根系の障害、生育基盤の問題などが関係しており、注意して観察する必要がある」としています。上に出たサインの原因が下にあることがある、という話です。
幹と根元に出るもの
世田谷区は、みどりの維持管理のページで、樹木の状態を見るチェックポイントとして次を挙げています。
- 枝や幹、根株周辺にキノコ等の菌類が発生していないか
- 枯れ枝や、折れ枝がないか
- 幹の剥がれや空洞はないか
- 害虫等が発生していないか
台風の前に見る項目は台風の前に庭木のどこを見るか。国と東京都が街路樹・公園樹で使っている点検項目からにまとめました。
キノコは、出ている場所で意味が変わります。都のマニュアルは、枯枝を分解する菌(落枝の原因)と根株心材腐朽を起こす菌(倒木の原因)を分け、「前者の多くが大枝や幹の枯死部に生育し、後者の多くは幹下部や根元部に見られる」としています。
| 出ている場所 |
主な種類 |
腐朽による危険性 |
| 大枝 |
カワラタケ、スエヒロタケなど |
落枝 |
| 幹 |
コフキタケ、シイサルノコシカケなど |
幹折れ |
| 根元や幹下部 |
ベッコウタケ、マンネンタケ、ナラタケなど |
根返り(倒木) |
木材腐朽菌は剪定痕や枯死部などの傷口から侵入して材を腐朽させます。都の基準では、ベッコウタケ・コフキタケ・ナラタケ・ナラタケモドキが発生し、かつ梢端に枯れや衰退が発生している場合が「不健全(更新)」です。上と下の両方にサインが出ている状態、ということになります。
倒れる側に近いのは、どういう状態か
国土交通省関東地方整備局 東京国道事務所の街路樹点検マニュアルは、点検の結果を危険度ランクⅠ〜Ⅳに区分しています。庭木の判定に直接使うものではありませんが、どの状態が倒伏側に置かれているかは読み取れます。Ⅲは「強風等の圧力がかかった場合に倒伏の可能性を有する場合がある」で、ほぼ枯れている、幹周長比1/3以上の腐朽、ベッコウタケ・コフキタケの確認が例です。Ⅳは「完全に枯死・揺れが大きい等倒伏の危険性が高い」です。
同マニュアルの表6では、樹勢・樹形の五段階が「5あり」(ほぼ枯死)でⅢ、「完全に枯死」でⅣ。腐朽も空洞も揺れも無くても、完全に枯れていることが確認された時点でⅣ、つまり速やかに伐採の側に入ります。葉が落ちているだけの木と、完全に枯れた木は、ここで扱いが分かれます。
揺れも同じランクに置かれていて、「揺れ(大)」があれば他の項目に関わらずⅣです。ただしこの程度は「大径木(幹周60㎝程度~)について」と前置きされた定義で、根元から全体が大きく動く、押すのをやめても揺れが残る、地際と土の間に隙間ができる、支柱で支持できない状態を指します。表6には「※幼木等で揺れが大きい場合は危険度ランクⅠとし、支柱対応を必要な処置(その他)に記載」という注記もあり、若い木のぐらつきは伐採ではなく支柱で対応する側です。
見るべきは、枯死しているかどうかと、傾きや揺れ、根元がどれだけ残っているか。この二つが重なるほど、倒伏側に寄ります。ただし幹を強く押す確認は負担がかかるので、傾いている木や根元にキノコが出ている木で試すのはお控えください。
枯れていた場合、切る前に確かめること
世田谷区のみどりの基本条例に基づく伐採届は、地上1.5メートルの高さにおける幹周り80センチメートル以上の樹木、もしくは高さ10メートル以上の樹木を伐採しようとする所有者が、伐採前に出すものです。ただし区は届け出の対象とならないものも並べていて、そのひとつが「枯損した樹木又は危険な樹木の伐採」です。枯れた木は、上の寸法を超えていても、みどりの基本条例の届出は対象外という扱いになります。生きている木を切るときの届出の中身と出し先は世田谷区で庭木を切る前ににまとめました。
ただし、みどりの基本条例の届出が要らないことと、何の手続きも要らないことは別です。区は同じページで「ただし、『世田谷区風景づくり条例』に基づく『木竹』の伐採の届け出は別に必要となります」としています。風景づくり条例の届出対象は、一般地域では樹林地の面積1,000平方メートル以上ですが、国分寺崖線とその周辺などの風景づくり重点区域では「高さ10m以上の樹木(竹を除く)については樹林地の面積にかかわらず、すべてのもの」が対象です。この区域なら、枯れた高木が一本でも届出の対象になり得ます。崖線側の区域については国分寺崖線の斜面で庭木を切る前に。世田谷区の崖線地区と、都が指定する区域に書きました。
もう一つが多摩川風致地区です。東京都風致地区条例で許可が必要な行為に「木竹の伐採」が挙がっていて、こちらは幹周りや高さの下限がありません。枯れていても、細くても、区長の許可が要ります。指定があるのは玉川・砧の両総合支所管内の町で、町の全域が指定されているとは限りません。範囲と手続きの流れは成城・岡本・瀬田で庭木を切るときは、区の許可が要ります(多摩川風致地区)に書きました。
急ぐかどうかの目安は、倒れたときに何があるかで変わります。人が通る側に傾いている、塀や電線が下にある、といった条件が重なるほど、待つ理由は減ります。
庭番にご相談いただけること
庭番は世田谷区とその周辺で、伐採、抜根、剪定、草刈り、庭の片付け、植栽・植え替えを請けています。八年、二千件ほど木や草を見てきました。枯れているのか休んでいるのか判断がつかない状態でのご相談も承ります。幹と根元の様子、傾きの向き、下に何があるか。写真だけでも見当はつきます。ご相談は電話とLINEで。
参考にした資料
この記事は2026年9月時点の、国・都・区の公表資料によります。判定基準や届出の条件は変わることがあります。上の各ページで最新の内容をご確認ください。